【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

終わりの音、始まりの合図【短編】

#parallel123world103[短編28]

 

 

何かが崩れ落ちる音

それは何かが始まる合図

 

 

数日前の生活と現在の自分。

この世界のどこに行っても

誰にも止められないものがある。

いくらお金を積んでも、命を賭けても、止まることはなく動き続ける。

 

 

それは時に無性に不安にもなるが、過ぎることで楽になることもある。自分の力ではどうしようもない事を解決しようと、無い頭をフル回転させる。しかし、何も変わらないまま数日が経った。あの時のいたみも、あの時の悲しみも、今は少し和らいだ。結局、止められないもののおかげで、大切なものは薄らいでいくのかもしれない。

 

肌の温もり、優しい声、一緒に食べた料理の味、泣きながら見た映画のストーリー、お揃いのコップ。

 

記憶の中、鮮やかだった色が、少しずつ抜けていく。色は全て抜けていくが、まだそこにある。

 

 

また、新しい絵を描こう。そこにまた、色を塗ろう。沢山の絵を飾って。

そこで、終わりの音を聞き、始まりの合図を待とう。