【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

am4:56

#parallel123world104[短編29]


20歳になったからといって、急に大人になる訳ではない。昨日行ったジムでは、おじさんから少年と間違われるくらいだから。大人になった実感は、1mmも、むしろ全くない。周りの大人には、惑わされる。素直で純粋な、上に向かって伸びようとしている心を、モグラ叩きの要領で潰される。本人には、そのつもりはないのだろう。惑わされるほど、柔らかく繊細な心。うぶな証である。でも、このままでいたい。柔らかく繊細な心で、世界の全てに惑わされ、痛烈に刺激的に生きることが、それほど悪くないこともしっている。

「わかってほしいなんて、思わない。」

とかいう、君は嘘つきだ。大人になりたい証拠。そもそも、なろうとして成れるものでもない。気づいたら、帰れなくなっている。

「わかってほしいし、わかりあいたい。」

無理だと言うことは、重々承知しているつもりだ。あなたの感情はあなたのものでしかない。それと同じように、私の感情は私だけのものだから。

 

 

 

旅行先で乗ったタクシーの運転手さんが、たまたま同郷だった。君に電話しようとしたタイミングで、電話がかかってくる。ふと見上げた空に、虹がかかっていた。痛みを与えてくれたものに、憎しみはない。あるのは、苦しかったという簡素な記憶。それもまた、日々の雑踏に紛れて消えていく。ただの偶然、あるいは運命的で奇跡的なもの。いつも映画の主人公のつもりで生きている。だから、その他大勢はエキストラ。引き立て役という訳だ。自意識過剰という言葉に、違和感を感じ出したのは、エキストラの一言がきっかけだった。

 

 

 

最近は、いつも空を見ている。朝方の空は、何回見ても、何回も見られる。飽きないのだ。朝方4時50分ほどに見られる、朝日が昇る瞬間、空に青とピンクの絵の具を流し込んだような、えもいえない圧巻する綺麗な風景。人はそれを「マジック・アワー」とよぶ。写真を撮るのに必死で気付かなかったが、右足くるぶし、蚊に刺されている。