【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

見知らぬ土地で迷子【短編】

#parallel123world90[短編22]

 

 

「ここはどこ、わたしはだれ?」

見知らぬ土地。フラフラと散歩のはずが、迷子になってしまった。携帯の充電は7%、方向音痴の自分に嫌気がさす午前1時。何をやってんだ。軽い気持ちで、ほんの軽い気持ちで散歩をするはずだった。

 

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見知らぬ土地には、魅力が溢れてる。全てが新鮮で全てが刺激的。夜ってのがさらに気持ちを助長する。来た道をただ帰るはずだったのに、あの曲がり角に一向に着かない。おかしいな。少し戻る、もう少し戻る。こうなるともう、迷路の中にいるような感覚。さっきまでいた場所、さっき通ったはずの道に、戻らない。右手に持った携帯の充電が、じりじりと減っていく。今は4%、今帰れる確率も4%じゃないかなって思えてきた。

 

 

最近の自分はいつもそう、魅力的なもの刺激的なものに魅了され、携帯の液晶に目を取られ。本当に見たいものを、見れていない。自分が今どこにいて、何をしてるのか。目的地さえもはっきりしない。月明かりの下、知らない場所を行ったりきたり、昼間なら間違えることはなかったのかもしれない。深夜のテンション。不安と焦り、少しの諦めを心に、コンビニのビニールをぶら下げた左手、右手には命綱の携帯。馬鹿だなと、自分に言ってみる。何も変わらないことを、わかりながらなんとなくこの状況を楽しんでるだと思う。

 

 

本当に大切なもの。自分がやりたいこと。確信をつける答えが、出そうで出ない。今の私の心も迷子なのかな。暗闇を照らす街灯。心に灯る光はなんなんだろう。不安と焦り、少しの諦め。この状況を楽しんでいる。実は自分に期待をしている。これから先の不安よりも、今はこの見知らぬ土地での迷子体験を、明日仲間に話して笑い話できることを楽しみに変えている。

 

 

 

今この瞬間、迷子。いつになったら帰ることができる。帰らなくていいかもしてきた。このまま、どこかへ行ってしまおうか。綺麗に咲いた桜がちり、道路の上で咲いている。雨が降り出した、早く帰りたい。帰る場所はないけど。

 

 

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