【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

Traversée【短編】

#parallele123world81[短編18]

 

 

駅前はいつでも、人が多い。人と人が交差していく、その線を描いていくとここはもう真っ黒になってしまうだろう。一人でイアホンをつけて、すり足で歩く。二人で次は何を食べようと歩く。同じ道を歩いているのに、まるで異なる事を考える。明後日には、この街をたつ。皆からは、惜しまれながらたつのかもしれない。自分は、それほど大した者ではない。自分は、それほど大した者でもない。なのに、なぜ。次に行く事を嫌うのは、田舎の者の宿命なのか。「帰って来いよ。」というのは、自分が出ていけないからなのか。外に出た者に、外のことをきき「外よりここにいた方が、よっぽどいい。」と自分に言い聞かせたいのか。最近は、もっぱらそんな事をばかりを考えていて。何も楽しくない。行くそばから、帰る事を考える。田舎とか、都会とかではない。そこが問題なのではない。ここが全てでもなければ、ここではないそこが全てでもない。自分が全てでも、自分以外の人が全てでもない。

 

 

人は、どこかへ歩いていく。何食わぬ顔をして、何かを背負っている。わざわざ言いはしない。言っても何も変わらないから。ただ、歩く。歩いた先に何があるのかは、わからぬまま。

 

 

久しぶりに、会う君には少し期待していた。僕が旅立つ事を励ましてくれると。君に会い、話してそれは自分の自惚れだったと気づいた。出ていく事を、恨んでいる、憎んでいる。そんな風に見えた。意外とあっさりしている、僕をみて、君は「裏切り者だ」と言った。裏切った覚えはない、期待にそう様に生きているのではない。ただ僕は、僕の道を歩いている。同じ道でも歩き方は違うし、歩く速度も違う。現にほら、違う靴を履いているだろ。君はなぜ、そんなにも、怒っているのだ。さっきも言ったように、僕は大した者ではない。そうだろ。ここに僕がいようと、ここに僕がいなかろうと。明日はくるし、今日は終わる。何も変わらない。ここに僕はいた。

 

 

強い風が吹いた、肌寒くなった駅前には、今も人が行き交っている。皆、何を考え、どこにいく。明日には希望があるのか、昨日には夢があったのか。