#parallel123world78[短編16]
ピンクの百合の花言葉
虚栄心
猫柳の花言葉
自由気まま
この組み合わせは、何とも面白い。
1人の中に2つの思い。
それとも、この部屋にいる
彼女と僕、1人1人一つ一つの思いなのか。
彼女といっても、その方はもうすぐ79歳を迎える女性。いろんな経験をされて、今はこの田舎に住んでる。3年前にご主人を亡くしている。とても社交的で明るく、芯の強い女性だ。
しかし、僕は本当の彼女を知ってる。もちろん全てではない。
久しぶりに、彼女の家を訪ねた。こちらの話しはぼちぼちで、彼女はずっと話し続けた。独り身の悲しみ、老いる悲しみは今の僕にはわからない。僕はまだ24歳で、彼女からすれば孫のようなものだ。親戚でもないのに、なぜだか付き合いは8年くらいになる。8年にもなるのに、なぜか緊張する。人として尊敬できるからだと、今は感じるが当時の自分にはわからなかった。
玄関に飾ってあった、花の意味。何気なく選び、何気なく飾ってある。人の直感は、割と真髄をついてる時がある。
それにしても、虚栄心という言葉は意外だな。でも、なんだかわかるような気がする。寂しくて、不安で、この先を考えたくもないのに、人の前に立つと気丈に振る舞う。この先の自分、今の生活に追われて、若さゆえの見栄っ張り。
どちらも虚栄心。周りからは、自由気ままに生きている2人に見えるかもしれないが、実はそうではない。自分という鎖で、自分を繋ぎ、動けなくしている。なんとも、滑稽だ。
彼女はなぜあんなにも、強くなければならなかったのか。何がそうさせたのか。彼女にもわからないであろう。でも、今こうして僕と会えたのだから。弱くなれる時間を作ろう。明日が来る事への楽しみに寝ることができる日を。