【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

エンドレス老婆

 

 

 

カフェでランチをした後、映画を観ようと突然思い立つ。カフェはまだ待ってる客が沢山いる。会計を済ませて、車に乗り映画館のあるショッピングモールに向かった。ショッピングモール内の3階に映画館はある。映画への期待を胸に、エスカレーターを上がる。1階から2階へ上がり、ホールのような場所を少し歩き2階から3階に上がるエスカレーターの前に来た。映画を観終わったのか、老婆と夫人が3階から降りてきた。あの2人はたぶん、親子だろう。無表情で淡々としている老婆は、3階からのエスカレーターを降りるとUターンした。2階へついて、1階へ降りる予定だったのだろう。しかし、そのエスカレーターは先ほど降りてきた先の3階に上がる。娘だと思われる夫人が、老婆の腕をとっさに強く引いた。危うく3階にまた上がるとこだった。引き止められた老婆は、表情を一つも変えずに何食わぬ顔で私たちが歩いてきた方向へ向かった。

あの老婆は、夫人がいなければずっとあのエスカレーターを上っては下り、下りは上っていたかもしれない。

進んでいるようで、進んでいない。同じ事で、同じ場所で、悩んでいる事がある。

誰かに腕を引かれて気づく事がある。引かれても気づかない事もある。エンドレスにエスカレーターに囚われるような、そんな感覚。感情や環境が上がっては下り、下りは上っていく。それが人間らしい。

 

自分の現在地ぐらいは、わかっておきたい。文明が発達して、紙ではなく携帯で地図を見る事ができるようになった。しかし、いつの時代も自分の現在地が分からねば、これからどこに行くにも検討がつかないのは一緒だ。

 

あなたは今、どこにいますか?

そして、これから先どこに向かいたいですか?