【parallel _123_world】

自分も知らないもう一人の自分、あなたの中にも。

ふいに【短編】

#parallel123world69[短編13]

 

 

昨日の夜更かしがたたって、今日は遅めの目覚め。カーテンの向こう側では、雨が屋根を打つ音。遠くの方で雷が鳴っている気がする。まだ寝てたいような、起きて動きだしたいような。これが春なのかな。

 

 

まだ、少し肌寒い朝、背中に温もりを感じる。後ろから手を回し、ぎゅっと抱きしめられている。そのせいで身動きもとれない。仕方なく、ぼんやりする事にした。寝息が聞こえて、かすかに背中にかかる。顔は見えないが、スヤスヤ寝てるに違いない。あったかさは、起きてからの方が増した。それは、たぶん身も心も。

 

 

さすがに、起きないと今日一日が、このまま終わりそうだと思い、腕を解いた。こんな事では起きない事を知っている、だから、遊ぶ事にした。ほっぺをツンツンとつつき、ほっぺを撫でる、耳を人差し指でゆっくりと一周。むにゃむにゃして、起きかけるが起きない。

 

 

起きてから、さっきの質問をした。「ねぇ、さっきね。後ろから抱きついてたよ。動かなくてさあ、覚えてる?」と。そしたら、「うーん。かすかにね。寒かったから。」とはにかんだ。なにこれ、反則じゃない。

 

 

なんで、出会ったのかも忘れたくらい、一緒にいるから、思い出そうともしなかったけど。なんで一緒にいたいかは、わかる気がする。覚えていないかもしれないけど、前に買い物しててぶらぶらと歩いてた時。ふいに、「たぶん、これまでもこれからも、こうしていられるのって、君だけだと思う。」って言ったよね。その時ね、嬉しくて飛び上がりそうになってたんだよ。

 

 

誰かのための自分になれた。

 

そう思えたの。

 

ありがとう。